
「金利って、借金したときに支払うお金でしょ?」「金利の話がFXと関係あるの?」と思われる方も多いかもしれません。
一見すると関係なさそうに見える金利とFXですが、実はめちゃくちゃ関係あるのです。
というか、FXでこれまでのテクニカル的なポイントを全て無視して相場が大きく動くとき、金利が大きく関わっていることがほとんどです。
それくらいダイレクトにFX相場に影響を与える要素なので、金利についてはしっかりと理解してください。
実はこの記事を書き始めているのは2023年1月。
2022年のドル円相場は3月から急上昇を始めあっという間に120円、130円と次々に節目を突破し、10月にピークの151.9円をつけました。
その後のドル円は大きく下落し、131円台で2022年を終えることになりました。
その時期のドル円チャートの週足はこちらです↓
これだけ大きな値動きが起こったのにはもちろん理由があるのですが、その主な原因が「金利」にまつわることだったんですね!
金利が為替相場に及ぼす影響について全く知らないという方も安心してください。
この記事を読んでいただいた後には、2022年のドル円がどうしてこれだけ大きく動いたのかがはっきりわかるでしょうし、金利がどれだけFXをやる上で大事なものなのかを理解できると思います。
金利の身近な例
まずは金利について理解することが大事ですね!
金利を一言で表現すると、お金の貸し借りの際に発生する利息のことです。
金利にはいくつか種類があるのですが、まずは身近な例を見てみましょう。
消費者金融からお金を借りる時に余分に返済するもの
大きな買い物をする時、急な出費があった時…まとまったお金が必要なタイミングってどうしてもありますよね。
そんな時に都合よく口座にお金が余っていればいいのですが、今月の生活費、ローンの支払い、カード料金の引き落としなど、生きているだけでお金がかかるもので、急に大きなお金が用意できないことがあります。
そんな時に便利なのが消費者金融などですね。僕たち消費者個人にお金を貸してくれる便利なサービスです。
ただし消費者金融側もただ返してもらうだけだと商売にならないですし、借金の踏み倒しも絶対ないとは言えません。そのリスクも考慮した年間数パーセントの利率を上乗せして返す必要があります。
この「年率◯%」と表現されているのが金利です。
銀行に預けた時についてくる利息
あなたが普段使っている銀行はどこでしょうか?
「銀行にお金を預ける」と表現することが一般的ですが、実は預金というのは「銀行にお金を貸している」と表現した方が、より本質的に感じます。
「えっ?銀行にお金を貸しているつもりはないんだけど…」
とあなたは思うでしょう。
実は、あなたが銀行に預金しているお金はただ銀行が保管しているだけではなく、その預金を元手に資産運用したり、あるいは銀行ローンを申し込んだ人に融資して利率を稼いだり、そうやって銀行としての事業資金に使われていたりもするのです。
通帳記入すると入金欄に「利息 〇〇円」と記載されているのを見たことがありますか?
あれは、お金を貸してくれているあなたに対して、銀行が利息を支払っているということです。これを預金金利といいます。
その利率もしっかりと決まっていて、あなたの銀行名を入れて「〇〇銀行 預金金利」と調べてみてください。0.001%など、金利のパーセンテージが出てくると思います。
5%とすると、1,000万円預けていれば年間50万円、なかなかの金額です。投資などしなくてノーリスクでお金が増える時代があったんですね。
FXに最も大きく関わるのは政策金利
金利の身近な例を紹介したことで多少親しみやすくなったかと思いますが、そもそも金利はややこしくてつまずきやすいポイントです。
というのも、金利にはいくつか種類があって、どれも「金利」と表現されるため、その都度文脈判断が必要だからです。
2.短期金利
3.長期金利
それぞれの意味は決して難しいものではありませんが、しっかりと脳内変換できるように理解しておきましょう。
とはいえ一気に3種類を説明するとこんがらがってしまうので、今回は政策金利を取り上げます。
それ以外の金利については、また別記事を作りたいと思います。
FXと政策金利の関係性
政策金利に焦点を当てると、金利の低い通貨が売られて、金利の高い通貨が買われるという法則があります。
理由はイメージしやすいと思いますが、金利の高い通貨を持っていると利息でお金が増えるからです。
つまり低金利の通貨を持っているより高金利の通貨を持っている方がお得だということですね。
大きなお金を動かしている大口投資家と呼ばれる人たちは特に、金利の高い方へ通貨をまたいで資金移動を行います。
これが政策金利によってFX相場が動くメカニズムです。
・政策金利下落→通貨安
政策金利ってどういうもの?
「金利」とついているのでなんとなく意味はわかると思いますが、政策金利って具体的にどういうものなのでしょうか?
政策金利は中央銀行が決める金利のことを指していて、その国の景気をコントロールするのにとても重要な役割を持っています。
金利を上げることを「利上げ」逆に下げることを「利下げ」というので覚えておきましょう。
中央銀行の役割
中央銀行というのは銀行の中のトップと考えるとわかりやすいです。
日本だと日本銀行(日銀)、アメリカだとFRB、という具合にそれぞれの国に中央銀行は存在します。
ここからは日本の例を出して説明していきます。
日本だと三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などといった銀行がありますが、それらを取りまとめるような立ち位置にあるのが日本銀行です。
日銀はそういった銀行からお金を預かることから「銀行の銀行」と呼ばれたりもしますが、この時に銀行側に支払う利息のことを「政策金利」といいます。
政策金利が高ければ高いほど、銀行は利息で儲かるので、積極的に日銀にお金を預けたくなりますね。逆も然りです。
勘の良い方はお気づきかもしれませんが、政策金利をどうすると景気が良くなるでしょうか?一度スクロールを止めて考えてみてください。
政策金利が景気に与える影響
銀行の気持ちになって考えてみると、政策金利が上がれば上がるほど、日銀にお金を預けたくなりますね。
ということは、預金の大部分を日銀に預けるため、企業、個人にお金を貸すことが減ってしまいます。
日銀に預けてもそこそこの利息がつくわけですから、わざわざお金を貸し出すなら金利を高めに設定するのは当然です。
そうなると、企業や個人は「金利が高いから借金はやめておこう」と思いとどまることが多くなり、消費が減っていきます。(景気を後退させる)
また、銀行が預金を募り日銀に預け、世の中に出回るお金を吸い上げることになるので、通貨価値は高くなります。
金利が高いということは、借りると損ですが銀行に預けたり投資することで増やしやすくなりますよね。つまり通貨の需要が上がって通貨価値が高くなるのです。
記事執筆時点では2023年1月18日ですが、今日のお昼頃にちょうど日銀の政策について重要な発表があったところです。
詳しいことは記事の主旨から外れるのであえて書きませんが、これも日本の金利政策に世界中が注目するイベントだったために、直後にFX相場は相当動きました。
また、政策金利は株価にも影響をおよぼします。
上述した通り、政策金利が高いということは借金コストが上がるということ。
事業の運転資金を調達するために借金がしづらくなってしまうので、企業の業績が下がりやすくなってしまいます。
つまり、政策金利上昇は株価が下落する要因になるということですね。
これらは逆も然りです。以下にまとめておきます。
・政策金利下落→通貨安→株高(景気拡大)
景気は良すぎても悪すぎてもダメです。
「景気は良いに越したことはないじゃないか!」と反論したくなる気持ちもわかりますが、良すぎて失敗した例がバブル経済です。
景気が良くなりすぎるとみんなが必要以上にものを買い、物価が上がりすぎてしまいます。
本来の価値以上に物価が高くなってしまうと、ある時その乖離に世の中が気づくんですね。
結果、バブル(泡)が弾けるように大暴落、一気に不景気の波が押し寄せることになります。
急激な景気の変化は世の中に大混乱を招いて、国民の生活にも支障をきたしてしまうのです。
景気は常に「良すぎず、悪すぎず」をキープする必要があるので、政策金利を変えるタイミングはまさに中央銀行の腕の見せどころ、というわけです。
余談:マイナス金利ってどういうこと?
長らく景気低迷が続く日本では「マイナス金利」という政策が採用されてきましたが、どういうことでしょうか。
これは言葉の通り、政策金利がマイナスになるということです。
つまり、銀行が日銀にお金を預けると、利息でお金が増えるのではなく減ってしまうのです。
つまり、銀行としてはあまり日銀にお金を預けたくなくて、低金利でもいいから個人や企業にお金を貸し出す方がマシ、ということです。
日銀としては、あえて金利をマイナスにして預かり金を減らすことで、市場に出回るお金を増やして景気を回復させたい、という狙いです。
今まで「マイナス金利」と聞いてピンとこなかった方も、この記事を読み進めるうちに理解できるようになったのではないでしょうか。
ファンダメンタルズを学ぶことでFXの値動きの法則を理解すると同時に、今まで遠い世界のことのように感じていた経済ニュースを身近に捉えることができるようになるのは素晴らしいことですね!
金利政策変更で実際に相場が動くタイミング
景気はコントロールが必要と言いましたが、とはいえ金融政策は慎重に行う必要があり、突然利上げから利下げに転じたり、利下げから利上げに転じてしまうと通貨は暴騰暴落を繰り返して大混乱に陥ります。
車の運転で急ブレーキ、急発進はダメですが、金融政策でも同じことがいえます。
たとえば景気が悪く利下げを繰り返していたところ、景気が良くなってきたのでそろそろ利上げに転じたい、という場合は、いきなり利上げするのではなく、利下げをやめることから始めます。
そしてタイミングを見計らって徐々に利上げに転じる、というのが一般的です。
このタイミングこそ、中央銀行の手腕が問われるわけですね。
このように段階的に政策金利をコントロールすることを「テーパリング」と呼びます。経済ニュースで時々この言葉が出てくることがありますので、意味は理解しておきましょう。
ちなみに「テーパリング=実質的な政策転換のサイン」と捉えられるため、それに対しても大きく相場が揺れ動きます。
そのため「そろそろテーパリングを検討する余地が出てきた」のような、クッションを何重にも挟んだような曖昧な言い回しがニュースに流れることもあります。笑
さいごに
最後にもう一度おさらいしておきましょう。
・政策金利下落→通貨安→株高(景気拡大)
ちなみに冒頭に書いた2022年のドル円の変動について、ここまで読んでくださったあなたなら理解できると思います。
2022年3月から10月にかけて、アメリカの景気の過熱によりものすごい勢いで利上げが行われました。その結果ドルが買われてドル円が上昇。
10月後半からはアメリカが「利上げペースを減速する」動きを見せたため、ドルが売られてドル円が大きく下落した、というわけです。
実際に金利が低下したわけではなくあくまでも「金利の上昇幅を減らしていく」だけ。つまり金利差はまだ開きつつあるにもかかわらず、これだけ市場が敏感になるわけですから、テーパリングの必要性を実感しますね。
こんなふうに、政策金利は各国の中央銀行が景気をコントロールするための最大の武器であり、それゆえにFX相場にも大きな影響を及ぼすものだと理解していただけたと思います。
投資家、FXトレーダーとしては必ず注目して置かなければいけない、ファンダメンタルズの中でも超重要事項です。
ここでは金利の中でも「政策金利」についての説明を行いました。
ただし先にも述べたとおり、そもそも「金利」という言葉は文脈によって違う意味で使われることもあります。
それについては別記事で解説しますので、必ずそちらも目を通しておいてください。
ファンダメンタルズに関するまとめ記事はこちらです。