
FXと債券って、あんまり関係なさそう。というか、債券価格なんて見たこともない!という初心者トレーダーの人も多いのではないでしょうか。
政策金利に関する記事でも少し書きましたが「金利」という言葉はいろんな文脈で使われることがあり、その都度文脈に合った解釈が必要です。
そして、その時々によって意味を理解するために、債券の知識が必要です。
債券について勉強することは、単に経済ニュースを理解するためだけのものじゃありません。
株とFXが強い関わりを持っているように債券とFXも大きな関係があります。債券価格がどう動くかを知ることで為替相場の大局を判断する材料になるのです。
債券とは
そもそも債券という言葉が聞き慣れない、という人も多いのではないでしょうか。
まずは債券が何か、についてわかりやすく説明します。
お金の貸し借りを例に取るなら「お金を返してもらう権利」を表すのが債権で「お金を返さなければいけない義務」を債務といいます。
債券と債権は別物ですので注意しましょう。
債券の生まれははるか昔のことだった
今は昔、ヨーロッパ各国が領土拡大に躍起になっていた頃のお話ですが、戦争には莫大なお金がかかるので、資金調達の手段としてお金持ちの国民から融資を募った国王がいました。
しかし戦乱の世の中で国王がコロコロ変わる時代。国王が変わってしまうとお金を返してもらえないリスクが当然あるわけですね。
そこで国王との口約束ではなく「国があなたからお金をいくら借りて、いつまでに返しますよ」というのを証明するものとして債券が生まれました。
債券は金融商品として売買される
債券は一言でまとめると借金の証明書ということになります。
そしてこの債券が、市場で取引される金融商品なんですね。
つまり「債券を買う=お金を貸す」という意味だということです。
誰にお金を貸すのか?という部分についてですが、企業に対してであれば「社債」国に対してであれば「国債」など呼び方があります。
中でもFXに関係が深いのは国債になりますので、今回は国債に絞って説明をしていきますね。
国債とは
国債は、政府が発行する債券です。日本だと財務省が発行していますね。
記事執筆時点で2023年2月ですが、財務省のホームページにはこのように国債の発行スケジュールが掲載されています。
もちろんタダで貸すわけではなく、やはりそこには利子がつきます。これがリターンになるので投資家たちが買うわけですね。
その利子のつき方は国債発行時の利率によって決まります。
例えば利率1%で発行された国債を100万円分買うと、年間1万円の利子がもらえるということになりますね。
これが10年ものの国債だった場合、10年間にわたって年間1万円、合計10万円の利益を手にすることになるわけです。
国債を買う=お金を貸すわけなので、10年後にはもちろん元本も返ってきます。
ちなみに、政府にお金を貸すということは返すのも政府ですから、返済されないことはほとんどあり得ないでしょう。
抜群の信用力があり貸し倒れリスクが限りなく低い代わりに、利率も他の金融商品に比べるとかなり低く設定されています。
つまり国債は「ローリスク・ローリターン」の金融商品であり、安全資産の1つとして保有されることが多いです。
国債の利率はなにで決まる?
国債の利率は、その時々の景気によって決まります。
財務省ホームページの国債に関するページでは「市場の実勢」により金利が決定すると書かれていますね。
つまり、銀行が個人や企業にお金を貸し出すときの利率など、世の中の一般的な金利動向を考慮して決められるということです。
政策金利に関する記事でも書いたとおり、景気が良いときに金利は上がりやすく、景気が悪いときに金利は下がりやすいものです。
国債の利率についてもそれに準じた決められ方になっているようですね。
そして、基本的に国債発行時に決まった利率は変わらない仕組みです。満期になって償還されるまでずっと同じ金額の利子が支払われます。
ただし、年によって景気や経済の状況も変わるため、今年発行された国債と来年発行される国債で利率が異なるケースは往々にしてあります。
国債の買い方
国債は売買される商品なので、もちろんあなたが購入することも可能です。
ただし国から直接買うわけではなく、国債は証券会社から買うことになっています。
各証券会社の「債券」の項目を見ると、このように募集されている国債一覧が出てきますね。上の画像は2023年2月8日現在募集されている米国債の詳細です。
さて、日本であれば財務省が国債発行を担っているのは先ほど書いたとおりですが、その発行前に各金融機関に予告しそれぞれの銀行や証券会社がオークションを行い国債を買っていきます。
(このときの平均落札価格も、利率を決める要因の1つだそうです)
その後に僕たち一般人が証券会社から購入することができるようになる、という仕組みです。
国債は市場で売買可能な金融商品
政府にとっては、この時点ですでに国債が売れており、あとは市場でどれだけこねくり回されても政府には関係ないことです。
他の金融商品同様、国債も市場で取引され、満期を迎えるまでにたくさんの人に売買されることが多いですね。
市場の原則にしたがって、需要が高まれば国債価格は上がり、手放す人が多くなれば国債価格は下がります。
債券の利回りの決まり方
- 債券の利率は発行時に固定される
- 債券の価格は需要と供給の関係で変動する
この2点を説明しただけで、勘の鋭い人は気づくかもしれません。
「国債って、安いときに買ったらお得じゃない?」
そう考えた方、正解です!
例えば利率1%で発行された10年ものの国債100万円分を取引する際、その国債を100万円で買おうが80万円で買おうが、毎年1万円のお金が入ってくるのは間違いないですよね。
国債を発行して資金を調達できた政府にとっては、その国債の所有者が誰であろうと、当初決めた「毎月1万円を支払い、10年後に借りたぶんの100万円を返す」だけですから。
ということは、例えば利率1%、10年ものの国債が100万円で売りに出され、価格が下がって50万円で購入できたとすると、50万円に対して年間1万円、つまり年間の利回りは2%になるということです。
・国債発行時に決められた利子(変わらない)=クーポン(coupon/利率)
・購入金額に対して年間で得られる収益率=イールド(yield/利回り)
似たような意味ですが、国債発行時の利率は変わらず、国債購入時の価格によって利回りは変わる、と理解しましょう。
つまり
- 国債の価格が上がれば利回りは下がる
- 国債の価格が下がれば利回りは上がる
というふうに、国債と利回りは逆相関の関係にあるといえます。
「長期金利」「短期金利」の違い
政策金利の記事でも書いたとおりですが、金利という言葉は色々な場面で使われることがあり、なかでも債券の利回りについて話す場合に使われるのが「長期金利」「短期金利」の2つです。
長期金利というのは10年ものの国債の利回りを指し、短期金利というのは2年ものの国債の利回りを指すことが多いです。
ニュースでは長期金利、短期金利という言葉がよく出てきますので、覚えておくと理解に繋がります。
長期金利は長期的な景気の見通しに左右される
長期金利は10年スパンの国債の金利なので、その国のこれからの成長が期待できるかどうか?という見通しで売買されることが多いです。
投資家目線で考えると、経済成長が期待できる国ならば、国債を買うよりも株を買ったほうが利益を得やすいですよね。
つまり景気が良くなりそうだと考えられているときは、ローリスクの国債を手放し、多少リスクを取ってでも利益を狙える株などの金融商品に買い手が移りやすい傾向があります。
※投資家たちがリスクをとって利益を狙うことを「リスクオン」といいます
つまり景気が良いとき、長期国債の価格は下落して、相対的に長期金利は上昇するということです。
逆も同じで、経済の見通しが悪い状況だと企業の業績悪化を予測し、株が売られます。リターンが少なくてもリスクが低い国債に手をのばすのは自然なことでしょう。
※投資家たちがリスクを回避し、堅実路線へ向かうことを「リスクオフ」といいます
つまり景気が悪いとき、長期国債の価格は上昇して、相対的に長期金利は下落するということです。
短期金利は政策金利の動向に左右される
国債には5年もの、3年ものなどもありますが、基本的には短期金利は2年国債を指します。
この短期金利は短期スパンでの金利であるということから、世の中の実勢金利をより表しているといえるでしょう。
そのため中央銀行の政策金利に左右されることが多いです。
国債利回りはその国の景気を反映しやすい
国債は他のどの金融商品よりも景気動向を反映しやすいといえます。
株価は会社の業績を反映するため、上がれば上がるだけ良いとされるのが一般的です。
一方の国債は、純粋に景気がよければ売られ、景気が悪ければ買われる傾向にあります。
債券市場を見ることで景気感を読み取ることができ、FXトレードを行う際のトレード根拠の1つに組み入れることができるということですね。
まとめ
FXトレードにおいて、債券との関連性が少なからずあることは理解できたかと思います。
中でも国債の利回りは、国の景況感を表す指数として活用することができ、為替相場の大きな流れを予想することもできるわけです。
・景気が悪い→国債価格上昇→国債利回り下落
また、長期金利は景気の見通しに左右されやすく、短期金利は政策金利の影響を受けやすいということも覚えておきましょう。
以上が債券に関する基本的な知識です。
次にFXトレードを行う際、ぜひ債券市場も確認してみて、それぞれの国の景況感について考えてみてください。
わからなくなったらこの記事に戻ってきて、深く理解するようにしてくださいね。
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